Little AngelPretty devil 〜ルイヒル年の差パラレル 番外編

     “晩秋睦夜閨蜜戯”
 


幾重にも引き回した几帳の中。
まだ今は、さほど寒々とする訳じゃなくて。
ましてや…頼もしい連れ合いの腕の中、
くるみ込まれての軽々と、
懐ろへ抱えられているのだ、どこが寒いことなやら。
蹴り散らかした花びらのよに、
五色七彩の錦が敷布の代わり、床にはばらまかれてあって。

 「まだ、綿入れは早いか?」

板の間に背中が当たっては痛くはないかと、
そろり、衣の重なりの厚めのところへ、
愛しき御主を降ろしつつ訊く葉柱へ、
蛭魔は うんと短く頷いただけ。

 ―― だって じきに暑くなる。

腰を、脚を、背を降ろされて、
支えの腕をすっかりと離される前に。
こちらから、その首元へとしゃにむにしがみつく。
ちょっと驚いて見張られた翡翠の眸が、
視線が合うと…ほころんで。
そのまま互いの瞳に見惚れての、
吸い込まれるように、顔が唇が引き寄せられて。
睫毛の先が頬を掠めたのと、
濡れて乾いた微熱が重なったのと。
どっちが先だったのかも曖昧になって。
なんて頼りない感触か。
それがもどかしくての、ムキになり。
もっともっとと喰い荒らすうち、
相手の熱、意識して。
心地いい酔いが回り始める。
澄酒のどころじゃない、抗えない酔い。
きつく強く抱きしめられて、
逃げやしないのに、うん、でももっと。
砕けるほどに、もっと。
俺のものだと吠えるよに、もっと。
重なり合ってるところから少しずつずれてった口許、
ああ、見なくとも判る。
熱が、顎へ降りて、おとがいを伝って、首元まで。
薄い皮膚の下、脈打つ血脈を辿ってくのが判る。
急くでない動作で、足元から腿を這い上って来た武骨な手。
ゆるめてた袴の佩を引き抜くと、
あらためての袷
あわせ越し、
内股に添わせ、じりり上がってくるのが焦れったい。
胸元に降りかけた顔へ、視線が合わないかと見やったその間合い、

 「…っ。///////」

腿を上がってたその手がふと離れ、こちらの脇へと添えられて、
親指の腹が…ぐいと押すように擦ったのが、

 「あ…。//////」
 「相変わらず、ここ弱いのな。」

袷は引き矧いでの小袖越し。
直接触れられるよりも強い刺激なのは、
爪の先にて擦られたせいか、それとも。
こちらの肌は全くついてゆかぬまま、
広い範囲を大きく弄られたからだろか。
胸乳の粒実が、つぶされかかっての じんと震えた。
触れられたところとそれから、
背条を伝っての腰から下肢へまで。
強い痺れのような熱い何かが、
激しい蹂躙となって一気に駆け抜ける。
熱くて甘く、狂おしい余韻が、
胸の底、腹の奥から、じわり、滲んで。

 「あ…んぅ…。//////」

あふれた声への羞恥が沸いて。
向かい合ってた胸から背へ、
逃れるように腕を回すと、
かいがら骨の下、おさまりのいいところへしゃにむに掴まり、
相手の肌へと頬を寄せる。
さらりとした葉柱の肌は、最初から熱くて。
肌の下、雄々しく盛り上がった筋骨が力強くもうねるだけで。
触れているところから愛咬を受けているような感覚がじんと涌き起こる。

 「んっ、んぁ、あ…っ。」

首の皮膚の薄いところにちりちりと痛みが走って。
柔らかな唇だのに、針でも含んでいるものかと、
痛みへ眉が寄るほどだのに。
それが離れ去ると…今度は、
足りぬ足りぬと肌が血脈がざわめいて止まらない。
いつの間にか内股へと割り入っていた膝が、
ぐいと上がって、触れた途端、

  「…っ、あっっ。///////」

そんな反応が来ると思わぬ激しさで、
全身が大きく撥ねた蛭魔であり。
気がつけば、体内に逆巻く何かに意識が翻弄されかかってる。

  ―― 何、これ?
      いつの間に、こんなことに?

暑くて熱くてたまらない。
でも、居心地が悪いって感覚じゃない。
重なった格好の下肢の重みも苦ではなく、
ただ、こちらの高ぶりが伝わっているかと思うと、それが恥ずかしく。
すがりついていた背がずり降りての離れゆき、
それと入れ替わるよに降りて来た黒髪へ、指を搦めて抱え込む。
いつの間にかはだけられていた胸元へ、
擽るようにキスを落とす葉柱が、

 「    ?」

何か言ったが聞こえなくて。
しんと静かなのに変わりはない。ただ。
胸の鼓動がうるさくて。
喉をこすってあふれ出す息が、耳元を通るのか やかましくって。
体中をデタラメに駆け回る、稲妻みたいな刺激がつらい。
胸元の粒実、首条の深み、唇と舌の脇のところ。
内股の真ん中とか、膝の裏、尻のふちも、
触られると切ないほど熱い何かが弾け出し、
そのまま何も判らなくなりそうで。

 「あ…あ、あっ。////////」

密着していた体へ、ぎゅうとしがみつけば、
大きな手が背中に臥せられた。

 ―― ああ、そのままでいて。なあ、そのまま。
     なに? なにするの?
     あ、…あ、やっ!/////////

下肢に押し込まれた熱いもの。
ぎちぎちと軋みながら押し入る痛みが、
そこから脳天までを、背条を伝って蹂躙してく。

  …… ああでも、この痛みには怖さはなくて。

薄く目を開けると、すぐの間近につらそうな顔が見える。
胸を大きくあおがせ、泣き出しそうな顔のこちらへ、
それでも視線を外せないのか、
それでつらそうなのか、
切なそうな顔してる葉柱がいて。

 「も、ちょ…だから。」

いつもそうじゃねぇかよな。
最初が少し痛むだけ。
こんな想い、させたくなけりゃ、
やたらデカくならなきゃいいだろがと、
いつだったか笑い飛ばしたの忘れたか?
脳天や爪先にまで至った痛みは、そこからじわりと反転し、
そのまま意識が飛びそうになったけど。
…ああ、ほら。もう平気だ。
平気だから、こっからは。
ちゃんと極楽へつれてけ、いいな?





  〜Fine〜  07.11.14.

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